特別な君のために
「……美冬、すっげー成長したな」
「奏多!」
「奏多先輩?」
私達のやりとりを、後ろでこっそり聞いていたらしい奏多先輩が、腕組みをしながら近づいてきた。
「由香さんが言いたいことも解る。でも、これは極めてプライベートなことだから、俺の口から説明したかった。だいたい、俺達まだ付き合ってもいないのに、三つも年上の元カノから直球で勝負されたらきついでしょう?」
ああ、やっぱりこの二人は付き合っていたんだ……ちょっとショック。
でも、まだ付き合ってもいないって言っていたということは……あれ?
奏多先輩の意図がわからなくなってきた。
「ほら、美冬がしょげてる。せっかく帯広からここまで来てくれたのに、楽しくない思い出を作っちゃったら受験勉強に差し障る! よし、どっか行こう。美冬はどこに行きたい?」
さっきと同じように、手を繋がれて、半ば強引に教室から出てしまった。
紅茶とサンドイッチは……?
そう言いかけてやめた。
綺麗なお姉さんの表情がとても怖かったから。
きっと、奏多先輩もあの空間から逃げ出したかったに違いない。