特別な君のために
「いや~、びっくりしたな。まさかあそこに由香さんが出て来るとは……」
結局、今日のお昼ご飯は、中国語の先生方が作る『本場の水餃子セット』になった。
確かに本場の味らしく、皮はもちもちぷりぷり、具もジューシーでとても美味しかったけど。
いいんだろうか、紅茶とサンドイッチは。
「由香さんって、先輩と付き合っていたんですね……」
「うん、もう、別れて半年近く経つけど」
「それで、どうして別れちゃったんですか?」
「さっき聞いたよな? 母親の病気のことを打ち明けたら、彼女の両親が猛反対したんだ。だから別れた」
あまりにもあっさりと身を引いたような口ぶりで、他人事ながら寂しくなった。
「そんなことで諦められるんですか?」
すると、奏多先輩の表情が険しくなった。
「じゃあ逆の立場で考えてみるといい。美冬が俺と付き合っているとしようか。俺の両親が、美冬との付き合いを『身内に障がい者がいる子とのお付き合いはやめなさい』って反対したらどうする?」