特別な君のために
部活を引退した私達は、あっという間に受験の渦の中へ放り込まれ、ひたすら学校と予備校と家をぐるぐる回っている。
こうなることはわかっていたけれど、なかなかしんどい。
それでも、頑張った分だけ偏差値も上がり、少しだけ目標が近づいてきたのを感じる。
冬休みになり、寄宿舎から千春が帰ってきた。
私は相変わらず予備校と学校の講習があり、千春の相手があまりできなかったけれど、その分、ランちゃんが遊びに来てくれた。
ランちゃんが我が家のキッチンで、千春と一緒にクッキーを焼いたり、ロールケーキを作ったりしているのを見ていると、本当に嬉しくなる。
お正月も過ぎ、また今まで通りの勉強漬けの毎日がスタートした。
センター試験の前日、予備校の授業が終わって家に着いたと同時に、奏多先輩からのメッセージが届いた。
いつもの他愛ない話かな、と思ったら、違った。
『お疲れ。今、帰省中なんだけど、会えるか?』
——お疲れ様です。会いたいです! どこで待ち合わせすればいいですか?
『美冬の家のそばにあるコンビニで待つ』
——了解しました!
突然のメッセージに、私は慌てて洋服を選び直した。
いつものブーツではなく、ロングブーツにしよう。
奏多先輩に会うのは学校祭以来だったし、私は少し浮足立っていたのだろう。
大事なことを忘れて、家を出てしまった。