特別な君のために
想い
四月。
私は念願の大学生になれた。
大学三年生になった奏多先輩と付き合い始め、毎日楽しかったり、戸惑ったり、ドキドキしたり。
なるみと譲君は、二人揃って北大へ進学した。
なるみは法学部、譲君は教育学部へ。
何となくだけれど、二人もちょっといい雰囲気なので、もしかしたら……と思っている。
千春は高等部の二年生になり、現場実習が始まったとのこと。
作業所で働くことを目標に、実習に合わせた勉強をしているという話だった。
奏多先輩のお母さんは、まだ入院中。
少し良くなっては、また悪化してしまうという繰り返しだそうで、長くかかることを先輩も覚悟している。
「入院中の方が安心なんだ。ちゃんと面倒をみてくれるし、自殺の心配もないし、他害もストップしてもらえるから」と自分自身に言い聞かせるように語ってくれた。
物心ついた頃からお母さんが病気で、たくさん傷つけられてきた奏多先輩。
二つ年下の妹の障がいを受容し、一生背負っていく私。
大好きなお父さんと生活基盤を、途中で失ってしまったなるみ。
みんな違う苦しみや苦労を味わってきたけれど、それぞれの目標に向かって進んでいる。
私の代わりに誰もなれないように、私の苦労を代わってくれる人もいない。
だからこそ自分で背負えるように、力を蓄えようと思う。
そのための手段が、この大学にはあるのだから——。