特別な君のために
大学を卒業して二回目の春、私は奏多先輩と結婚した。
控室で、お母さんに言われた。
「小さい頃、いつも『ママだいすき』って抱っこをせがんできた美冬が、こんなに大きくなって、花嫁さんになっちゃうなんてね……」
白いハンカチで目元を押さえて、ウエディングドレス姿の私を見ている。
「ちょっとお母さん、泣くの早すぎるよ」
「だってもう、お母さんが美冬を独り占めできる時間は、今しかないんだもの。だから言わせて。お母さんは美冬が大好きなの。千春に手がかかった分、あまり伝わってなかったかもしれないけれど、美冬は大事な宝物だから」
「お母さん、私まで泣かせないでよ……」
メイクはやり直しとなり、これ以上式が始まる前に泣かないでと釘を刺されてしまった。
憧れだった大学のチャペルでの結婚式。
大学時代のサークルの仲間と、高校時代の合唱部の仲間が、調和のとれた讃美歌を響かせてくれた。
最高の仲間に歌で祝福してもらい、大好きな人と歩いていく。
お父さんと腕を組んで歩く時、小さな声でこう言われた。
「色々辛い想いをさせてしまったけれど、美冬が生まれてきてくれて、本当に嬉しかったよ。奏多君と幸せにな。美冬は幸せになるために生まれてきたのだから」
「お父さん、ありがとう。幸せになるために、行ってくるね」
お父さんの手を離れて、私は奏多先輩のところへ。
これから先もずっと、病める時も、健やかなる時も。