特別な君のために
千春がことのほか、私達の結婚式を喜んでくれた。
披露宴で、私達の座るひな壇に近づいては、はしゃいで笑っている。
「おねえちゃん、きれい」
「おにいちゃん、かっこいい」
「ちーちゃんも、かわいいでしょ?」
無邪気に笑う妹も、もう二十歳を超えた立派な大人。
作業所での仕事にも慣れ、自分のお給料の使い方を訓練していると言っていたのだけれど。
「おねえちゃん、はい」
「え? なあに?」
「けっこん、おめでとう」
リボンのかかった、小さな箱をくれた。
「開けてみてもいい?」
「いいよっ!」
中に入っていたのは、手回しオルゴール。
小さなハンドルを回してみると、メンデルスゾーンの結婚行進曲が流れてきた。
「これ……どうしたの?」
「ランちゃんと、えらんだの」
「……もしかして、自分のお給料で?」
「うんっ! おねえちゃん、うれしくない?」
胸がいっぱいで、言葉にならなかった。
「お姉ちゃんは、嬉しすぎて泣いてるんだ。嬉しくても涙は出るんだよ」
奏多先輩がフォローしてくれたけれど、千春はどこまで理解できただろう。
「おねえちゃん、よしよししてあげる」
千春が私の背中をよしよししてくれるのを感じて、ますます泣けた。
また美容師さんに叱られてしまう。
今日の花嫁は泣きすぎだ、と。