特別な君のために

披露宴の余興は、高校時代の合唱部メンバーと、大学時代のサークルメンバーが合同で、ゴスペルを披露してくれた。

『OH HAPPY DAY』を指揮するのはやっぱり奏多先輩で、ソプラノのソロパートはなるみが歌う。

式場全体がパワフルな歌声に包まれ、最高の披露宴となった。


最後に配ったプチギフトは、千春がいる作業所で作ったクッキー。

みんなで作ったクッキーを、一袋ずつ丁寧に詰めて、リボンをつけたのは千春だそう。

こんな作業も、自分でできるようになったんだと思うと、本当に嬉しくなる。


クッキーを一人ひとりに手渡ししながら、お礼の気持ちを伝え、参列者全員をお見送りした。


奏多先輩のお父さんとお母さんにも言葉をかける。

薬の副作用で、眠気があるらしいけれど、車椅子に座ったまま、式と披露宴に参加してくれた。

きっと、相当疲れただろう。


「今日は本当に、ありがとうございました。これからよろしくお願いします」

「こちらこそありがとう。我が家に娘が来てくれて、嬉しいよ」

奏多先輩にそっくりなお義父さんが、ニコニコと応対してくれる。そして。

「いつか、孫の顔が、見られるのかしら……」

お義母さんが初めて、私に話しかけてくれた。

私と奏多先輩はお互いに赤くなった顔を見合わせて、それから笑った。

お義母さんも、笑っているように見えた。




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