特別な君のために
全てを包み込めるように~奏多の独白~
しまった。また遅刻だ。
暴れて刃物を探す母さんをなだめて、何とか薬を飲ませて寝かせたのが明け方の四時。
父さんはあいにく出張中だったし、マジで救急車呼ぶしかないのかと思ったけれど、それは避けられた。
その結果、睡眠時間三時間。
一時間目は体育でバスケって……朝飯も食ってないのに。
死ぬな、俺。
母さんから殺されかけて、バスケで殺されかけて、俺って生きる価値あるんだろうか。
そんなことを考えつつも、欠席日数は増やしたくないから、真面目に学校へ。
何だかんだで死なずに放課後を迎えられたのはいいけれど、激しくだるい。
部活で歌うのは好きだけど、筋トレは今やったら本気でぶっ倒れる。
そうなったら、誰があの母さんの面倒をみるんだ!?
あと一晩、父さんは戻らない。
何が何でも明後日まで俺が倒れる訳にはいかない。
ということで、みんなが筋トレやっている間に、俺は制服のまま、新一年生の勧誘へ向かった。