特別な君のために

悔しさと怒りと痛みで、涙が一気にあふれて流れ落ちた。


千春が私の言うことをちゃんと聞いてくれていたら。

千春がもう少しおりこうさんだったら。

千春に障がいがなかったら。

千春が帰省していなかったら。


……千春がいなかったら。


そこまで考えてしまって、また心が痛み出す。

ドアの向こうではまだ、千春が自分語りを続けている。

「ちーちゃん、べんきょうをしま~す」

「ちーちゃん、かいものがくしゅうが、すきで~す」

もう、電話の相手には確実に千春の障がいがバレてしまっただろう。


そう思ったら、今まで我慢していたこと全てが『我慢できないこと』に変わってしまった。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いってば!!もうやだこんな家!!限界!!」


叫んだ後、私は突っ伏して号泣した。

他に何もできなかった。

自分の心も身体も存在も全てが激しい痛みに襲われていたから。
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