特別な君のために
「いや、そうじゃなくて。……ごめん、俺の説明が悪かった。親が病気なんだ。もう、何年も前から。なかなか治らなくて、入退院を繰り返している」
「そうでしたか……。ごめんなさい。思いっきり勘違いしていました」
それは俺が悪い。勘違いしてしまうほど、あいまいにしか答えていないから。
「いつか良くなるかな、って期待しては裏切られて、結構ボロボロだった時期もあるんだけど、それも含めて俺の家族だから。一生背負っていかなきゃならないんだとしたら、ちゃんと理解できる人になろうって決めたんだ」
いまもまだ、ネットカフェに逃げることがある。
これはもう少し、父さんとの話し合いが必要だと、今回よくわかった。
「奏多先輩、すごいです。私なんて、ひとりで背負うのは無理だし、できるだけ避けようって思ってたくらいです」
「いいと思うよ、それで。俺だって最初から受け入れていた訳じゃないし、逃げてた時期もある。でも、やっと向き合えるようになったのが受験の頃で、進路のひとつとしてここを選んだっていうだけ」
「大学って、楽しいですか?」
「俺は楽しいよ。気になるなら実際に見学してみたらいいと思うけど」
これは、チャンス到来。
「よし、譲が来る前に。連絡先交換な」
美冬のスマホを預かり、IDを登録した。
「何かあったら、いつでも連絡しろよ。妹さんのことも、進路のことも、俺で良ければ話し相手になるから。あとカエルは大事に扱え」