特別な君のために
以来、メッセージのやりとりを『しつこい』と思われない程度に行い、美冬が俺の大学に興味を持つような話題を仕掛け、ついに志望校をここに決めたと言ってきた時には、ガッツポーズで叫んだ。
学校祭当日、うちのサークルの模擬店に連れてきた時のこと。
シフトでは午前中だけ手伝って、午後は全て美冬のために空けておいたのだけれど、どうやら午後の人手が足りないらしく、かなりお客さんを待たせているようだった。
仕方なく、美冬を店内で待たせて、裏方の手伝いへ。
何とか注文をさばき、そろそろ戻ろうと店内を見てみると……なぜかそこに、美冬と話す由香さんがいた。
「奏多のお母さん、心の病なの。奏多はそれでかなり大変な思いをしたんだって。殺されかけたこともあるって聞いたわ。だから、奏多と付き合うっていうことは、お母さんの問題も一緒に抱え込むことになるの。そこらへん、大丈夫かなって思って」
……時期を見て、ゆっくり話そうとしていたことを、由香さんによって『アウティング』されてしまった。
すーっと、心の中が冷えるのを感じた。
俺は、この人の何を気に入って、付き合っていたのだろうか、と。