特別な君のために
「ほら、美冬がしょげてる。せっかく帯広からここまで来てくれたのに、楽しくない思い出を作っちゃったら受験勉強に差し障る! よし、どっか行こう。美冬はどこに行きたい?」
この場から早く脱出するために、また手を繋いで教室から出た。
「いや~、びっくりしたな。まさかあそこに由香さんが出て来るとは……」
「由香さんって、先輩と付き合っていたんですね……」
「うん、もう、別れて半年近く経つけど」
「それで、どうして別れちゃったんですか?」
「さっき聞いたよな? 母親の病気のことを打ち明けたら、彼女の両親が猛反対したんだ。だから別れた」
「そんなことで諦められるんですか?」
そんなこと? いや、ものすごく重大なことなんだけど、それを美冬にも突き付けるべきなのか、一瞬ためらった。
だけど、いずれ付き合うとすれば、この問題は俺達にとって避けて通れない。
逃げるな、俺。
「じゃあ逆の立場で考えてみるといい。美冬が俺と付き合っているとしようか。俺の両親が、美冬との付き合いを『身内に障がい者がいる子とのお付き合いはやめなさい』って反対したらどうする?」