特別な君のために
しばらくの間、美冬は考え込んで……それから小さな声で、答えた。
「それは……妹が障がい者であることを受け入れられない人であれば、お付き合いは無理です」
「そうだろ。俺のせいで、彼女は両親からずっと責められ続けていたんだ。……だったら、別れるしかない」
「奏多先輩はどうなんですか? ご両親はどういうお考えをもっていますか?」
これはつまり、美冬と付き合った場合、俺の両親がどう思うか、ということか。
「父はたぶん、どんな境遇の人でも、受け入れると思うよ。母は……判断能力と責任能力がない」
「あの、お母さんのご病気って、何ですか?」
やっと、打ち明けられる時がきた。
「うつ病。結婚前からそういう兆候はあったらしいけれど、俺を出産したあと、一気に悪くなったっていう話だ」
「そうだったんですね……それで、この大学を?」
「うん。俺、母親からずっと『お前なんか産まなきゃ良かった』って言われ続けててさ、それが母親の本心だと思ってた。でも、実際には違うっていうことも勉強したよ。病気がそれを言わせてるから、本心はきっと違うって。そういう勉強をしなければ、一生知らずに、憎まれたままの息子で終わってたかも知れない」