特別な君のために

なるみの気遣いに応えなくちゃならない。

でも、痛みがまたぶり返してきた。

指が痛い。頭が痛い。心が痛い。存在そのものが痛い。痛い痛い痛い。


こんな場所で泣いてはいけない。

私は笑って、いつものように元気な声で挨拶しなきゃいけない。

「おはよう、じゃないね。こんにちは~。ちょっとドジって、骨折れちゃったよあはは」

そう言って、教室のドアを開けなきゃいけない。


……できない。今の私にはそれができない。

お母さんに電話した。病院が終わったらこんな時間になってしまったし、痛いから今日は休ませて、と。

なるみにも返信した。

『こっちこそ返信できなくてごめん。病院激混みで今日は学校休むことになったよ。骨折しちゃった。痛いわー。いろんな意味で痛いわー』

おどけた返信のようだけど、いろんな意味で痛いのは本当だ。

痛いし重いし苦しいし疲れたし……。

もう、何もかもどうでもいいと思って、学校方面行きのバスを見送って、自宅方面行きのバスに乗った。

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