特別な君のために
重い、という言葉に力をこめて、奏多先輩を見た。
一瞬、私の視線を避けたように思えたけれど、それからまた私を見て、続きを促した。
「私が小学校に入学した頃、妹は幼稚園児で、まだはっきり自閉症だっていう診断が出ていませんでした。
一緒に買い物へ行くと、妹はお店の中で走り回ったり、商品をむやみに触ったり、叫んだり。
それをクラスの子に見られて、からかわれたりすることもよくありました」
手に持った二等兵を、しょんぼりさせてみる。
それを見た奏多先輩が、悲しそうな顔をした。
「その頃の私は、すごく悩んだんです。もし、妹が入学してきたら、今よりもっとみんなからバカにされるんじゃないかって。結局、妹は特別支援学校の小学部へ行くことになって、ほっとしました。……ひどい姉、ですよね」
「そんなことはないよ。子どもって知らず知らずのうちに残酷なことをするから、そう考えるのはおかしくない」
「福祉が専門の奏多先輩でもそう考えてくれますか? でも、残酷なのは子どもだけじゃないです」
「それも知ってる。大人はもっと残酷だよな」