特別な君のために
そういえば、奏多先輩はどうして福祉系の大学へ進学したのだろう。

福祉といえば、お給料の割に仕事がきつくて大変だ、というイメージが定着していて、正直なところあまり人気のない職業だと思うのだけれど。

聞いてみたい。進路のこと、福祉のこと、なぜその道を選んだのか、ということ。

私は慌てて帰り支度をして、奏多先輩のいる教室の出入り口付近へ行こうと思った。


しかし、バッグを肩にかけて、奏多先輩の方へ向かって歩き出したところで、呼び止められてしまった。

「美冬先輩!」

ランちゃんが声を掛けてきた。

「なあに、ランちゃん?」

くるりと後ろを振り返って、できるだけ愛想よく返事をしたら、予想外の言葉が彼女の口から飛び出してきた。


「あの、ちーちゃんに、会わせてもらえませんか?」
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