特別な君のために
ランちゃんがぺこりとお辞儀をして去って行ったあと、今度はなるみが話しかけてきた。
「指、大丈夫?」
「うん。平気だよ」
お互い、顔を見合わせてにっこりとほほ笑む。自称サバサバ系のなるみだけれど、こういう気遣いはちゃんとできるところがいいと思う。
「ところで美冬、なんで奏多先輩と一緒に来たの?」
……さすが自称サバサバ系。こういうところは直球で来る。
「街で偶然会ったんだ」
うん、嘘ではない。駅前のネットカフェも街中であることに間違いないのだから。
「ふうん。で、何か話したの?」
「うん。妹のこと」
言ってから、しまったと思ったけれどもう遅い。なるみには秘密だった妹のこと、あっさりと部活OBに打ち明けるのはちょっと変だと思われる。
案の定、こう言われた。
「私には今まで内緒にしてたのに、奏多先輩には打ち明けるんだ~。それってもしかして……」
ニヤニヤして肘でつつかれる。ああもうっ!
「そんなんじゃないって! 奏多先輩は福祉が専攻だから。別に好きとか関係なく話を聞いてもらったの!」
それまでざわざわしていた周囲の会話が、一瞬静まり返った。
そして。
「そっか、俺、美冬の恋愛対象外なんだな」
……奏多先輩が、私達のすぐ後ろにいたなんて。