特別な君のために
私となるみはもう一度顔を見合わせる。

さっきのようなニコニコではなく、完全に『ヤバいよね……』というひきつった笑みで。

「まあいいや。美冬の率直な気持ちはよ～くわかった。これからも俺は美冬の良き理解者ってことで」

不敵な笑いを浮かべながら、奏多先輩はなるみにこっそり耳打ちした。私の顔を見ながら。

何を話しているのかはわからない。でも、なるみはうんうん、とうなずいて、ニヤニヤしている。

何だか二人とも感じが悪い。

まさか、部活をサボってクレーンゲームに夢中になっていたことをバラされているのではないだろうか。

「じゃ、そういうことで、美冬には絶対言うなよ！」

「了解です！　じゃあ美冬、私は先に帰るね。もう迎えに来てるから」

「あ、そうなんだ。バイバイ。また明日ね」


なるみが意味深な笑いを浮かべて教室から出て行ってしまい、それを合図にするかのようにみんないなくなった。奏多先輩と私と部長だけが残った。
< 62 / 179 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop