特別な君のために
部長がいつものように、廊下の電気を消しながら職員室へ鍵を返しに行くというので、私と奏多先輩が先に階段を下りる。

「先輩、なるみと何を話していたんですか?」

「秘密。まあ、悪いことではないと思うけど」

「そうですか……」


会話が途切れてしまった。

気まずい。さっきの流れから、変に意識してしまう。

何か別の話を見つけなくては。……そうだ。


「先輩はどうして、今の大学で福祉の勉強をしているんですか?」

少し、間があった。

「俺の学部、福祉心理っていうんだけどさ。支援が必要な人の心理を学ぶっていうのに興味があったんだ。意思疎通が難しい人だって、いろんなことを考えて生きているんだっていうこともわかったし」

「それで、自閉のことにも詳しいんですね」

「いやいや、まだまだ勉強しはじめたばかりだから。でも、俺も美冬と同じような状況だったから、否応なしに身についていたこともある」

「それって……?」

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