特別な君のために
「奏多先輩、すごいです。私なんて、ひとりで背負うのは無理だし、できるだけ避けようって思ってたくらいです」
「いいと思うよ、それで。俺だって最初から受け入れていた訳じゃないし、逃げてた時期もある。でも、やっと向き合えるようになったのが受験の頃で、進路のひとつとしてここを選んだっていうだけ」
「大学って、楽しいですか?」
「俺は楽しいよ。気になるなら実際に見学してみたらいいと思うけど」
そう言うと、奏多先輩は階段の踊り場で立ち止まって振り向いた。
「よし、譲が来る前に。連絡先交換な」
スマホを出すように言われ、慣れた手つきでお互いの端末を操作。
あっという間に奏多先輩のIDが私のスマホに登録された。
「何かあったら、いつでも連絡しろよ。妹さんのことも、進路のことも、俺で良ければ話し相手になるから。あとカエルは大事に扱え」
そうだった。カエル! バッグの中から二等兵を探し出して、ぺこりとおじぎをさせてみた。
「ありがとうございます。頑張ります!」