特別な君のために
全国大会まで、必死に歌って、何度も話し合って表現を工夫して、できることはみんなやったと思う。
顧問の五十嵐先生も、まだお子さんが小さいというのに、遅くまで練習に付き合ってくれた。
時々、五十嵐先生は自分の子どもを連れて、練習を見てくれていた。
その子ども達がまた可愛くて、私達部員の癒し系アイドルとなった訳だけれど。
「あら、美冬ちゃん、小さい子の扱いが上手ね」
練習の合間、五十嵐先生の下の子と遊んでいたら、先生から声を掛けられた。
「そうですか? ああ、私、妹がいるから慣れているのかも知れません」
「……そう、だったね。妹さん、支援学校の高等部に進学したんだっけ?」
先生には以前、話したことがあった。私が話す前から知っていたのかも知れないけれど、先生は丁寧に話を聞いてくれたのを思い出す。
「はい。寄宿舎生になりました」
「それで、自分の進学先も?」
「それだけじゃないですよ。でも、やっぱり妹のため、なのかな……」