伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
7.蜜月と密約
【親愛なる娘、ドロシアへ
元気かい?
手紙をありがとう。君が幸せな結婚生活を歩んでいると聞いて、本当にうれしいよ。
返事を書くのが遅くなってすまなかった。私もいい報告をしたいと思ってね。少し時間がかかってしまったんだ。
ノーベリー伯爵家の支援をいただいて整備した孤児院で、先だって祭りが開かれた。
久し振りにお邪魔して、マギーに作ってもらったお菓子を配ってきた。子供たちはとても喜んでくれたよ。
その席には、司祭様もいらしていて、私も話をさせてもらった。
司祭様は顔が広く、そこからローズベリー伯爵との縁をつないでもらえた。
来期には貴族議員としての活動も再開できそうだ。
これらの幸運は、ひとえに娘である君とノーベリー伯爵との縁によるものだ。
今年も国王様の誕生祭が開かれる時期となった。
ノーベリ―伯爵が外交的でないことは百も承知しているが、ぜひ娘の嫁いだ方の顔を見たい。良かったら誕生祭の時に話ができたらと思う。
伯爵にも聞いてみてほしい。返事を待っています。
では、君の健康と幸せを願って。
アントン=メルヴィル】
「まあ、良かった」
父からの手紙を読んで、ドロシアはホッと息をつく。
ここはノーベリー邸の二階のバルコニーだ。辺境地であるノーベリー領は一足早く秋がくる。
嫁いできて半年、初めての秋だ。