伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます


「遅いですわ。ビアンカさまからお話を伺いました。すっかり仲良くなられたようで良かったですわ」


クラリスが目配せしながらそう言う。
ここは話を合わせろと言うことか、とドロシアはぎこちないなりに笑顔を作ってビアンカの隣に腰かける。


「お待たせしてごめんなさい。ビアンカ様」

「やだ。呼び捨てにしていいって言ったじゃないの。あなたのほうが年上なんだし」


どうやらビアンカの中ではそういうことになっているらしい。


「あ、そうだったわね」

「チェスター、エフィーに言って、お菓子をもらってきてくれる?」


クラリスは意図的にかチェスターとデイモンを追い出す。
二人が部屋から消えたのを見て、クラリスが目配せをした。


「ドロシア様、ビアンカ様からお聞きしましたわ。彼女の結婚のために、ご尽力されたのだとか。オーガスト様もドロシア様からの頼みなら断れないと、投資の話を進めてくださるそうですわ。本当に良かったですこと」

「本当? オーガスト様が?」

「ええ。大丈夫です。先ほど私にお約束してくださいました」


クラリスが片目をつぶる。ドロシアにはまだ現状がつかみ切れていなかったが、ビアンカの前でおかしな行動はできない。


「そう。良かったわ。……これで一安心ね? ビアンカ」

「ええ。あなたのおかげよ。お城では赤毛を馬鹿にしたりしてごめんなさいね」

「いいえ。赤毛もそばかすも本当だもの。仕方ないわ」

「でも、その赤毛が宝石だとおっしゃったオーガスト様は素敵だと思ったわ」

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