伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
それを聞いて、デイモンが頷く。
「魂の融合……。そうか、あなたのお母さまの使い魔はメス猫だったんですな」
理屈は通っているように思えた。だけど、本当にそうなのか?
仮にそうだとしても中性が二組にしかならなかったら、やはり子供などできないのではないだろうか。
ドロシアは眉をひそめる。
「でもそれって、確証はないんでしょう? それに、そんなことをしたら、アールの命はどうなるの?」
「なーん」
「別に構わない……と言っている。長く生きたから、もう疲れた……とね」
「でもアールはオーガスト様にとって大切な存在でしょう? 私は瀕死なわけでもないのに、大切な命をもらえません。それにアンだって……」
傷ついたように出ていったアン。ふたりが時折甘えるように体を寄せ合っていたのをドロシアは知っている。アンはきっと、アールが好きなのだ。その気持ちは、ドロシアがオーガストを想う気持ちと違いはない。
「なーん」
アールはドロシアの足に体をこすりつける。
「……君にあげるのなら本望だ、って言っているよ」
オーガストが、力のない声で通訳してくれる。しかし、ドロシアは納得できずに首を振り続けた。
「でも、本当にそれで子ができるかどうかは分からないじゃないですか。私は、アールに無駄死になんてしてほしくない。だってアールはオーガスト様にとってだって家族のような……」
そこまで言って、ドロシアはハタと気が付いた。