伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
*
しかしその後、ドロシアはオーガストと二人きりになる機会が持てなかった。
「オーガスト様、夕食は……」
「悪いね。僕は夜はほとんど食べないから。チェスター、ドロシアの夕食に付き合ってやってくれ」
日が落ちる頃には部屋に籠って姿を見せてくれない。
「……私、嫌われているんでしょうか」
ぼそり、とチェスターに漏らすと苦笑したまま「オーガスト様は最近疲れやすいんです」と言われる。
チェスターは世間話には付き合ってくれるが、側に立ったまま使用人としての立場を崩そうとはしないし、
エフィーを呼んで同じ席についてもらっても、あくまで命令あってのことで対等の関係とは到底言えず、ドロシアは切なかった。
(マギーだったら、使用人っていっても家族みたいだったのに)
あくまでも、ドロシアはここでは“お客様扱い”だ。
寂しさを募らすドロシアに、優しいのは猫たちだった。
しょぼくれていると、アンをはじめとして猫が群がって来てくれる。
「ありがと、みんな」
「みゃおん」
その中には、オーガストが親しそうにしていた黒猫のアールもいる。
「なーん」
「アール。お前のご主人様はいったい何を考えているの?」
「なーん」
「このままじゃ、明日帰されちゃう。ゆっくり話さえできなかったわ。……どうしよう」
アールはアンと顔を見合わせ、ドロシアの足に体をこすりつけた。
しかしその後、ドロシアはオーガストと二人きりになる機会が持てなかった。
「オーガスト様、夕食は……」
「悪いね。僕は夜はほとんど食べないから。チェスター、ドロシアの夕食に付き合ってやってくれ」
日が落ちる頃には部屋に籠って姿を見せてくれない。
「……私、嫌われているんでしょうか」
ぼそり、とチェスターに漏らすと苦笑したまま「オーガスト様は最近疲れやすいんです」と言われる。
チェスターは世間話には付き合ってくれるが、側に立ったまま使用人としての立場を崩そうとはしないし、
エフィーを呼んで同じ席についてもらっても、あくまで命令あってのことで対等の関係とは到底言えず、ドロシアは切なかった。
(マギーだったら、使用人っていっても家族みたいだったのに)
あくまでも、ドロシアはここでは“お客様扱い”だ。
寂しさを募らすドロシアに、優しいのは猫たちだった。
しょぼくれていると、アンをはじめとして猫が群がって来てくれる。
「ありがと、みんな」
「みゃおん」
その中には、オーガストが親しそうにしていた黒猫のアールもいる。
「なーん」
「アール。お前のご主人様はいったい何を考えているの?」
「なーん」
「このままじゃ、明日帰されちゃう。ゆっくり話さえできなかったわ。……どうしよう」
アールはアンと顔を見合わせ、ドロシアの足に体をこすりつけた。