伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
*
そして、翌日。
朝から四頭立ての馬車が玄関前に用意されており、ドロシアは朝からオーガストに追い立てるように準備をさせられていた。
まだ一度も袖を通していないドレスも再びスーツケースの中に入れられ、馬車に積まれていく。
「さあ。準備はできたかい?」
「あの、私」
「お父上に手紙を書いた。これで君が責められることはないはずだから」
差し出された手紙を破ってしまいたいような気分になりながら、ドロシアは受け取った。
どうあってもオーガストはドロシアを帰すつもりでいるらしい。
「荷物はすべてのせましたよ」
チェスターの言葉に、オーガストはドロシアの手を取って口づけをした。
「君に会えて嬉しかったよ、ドロシア。どうか幸せになってほしい」
「……」
ドロシアは返事ができなかった。
幸せになってほしいというのなら、このままここにいさせてくれればいいのに。
「みゃおん」
アンが足元に駆け寄ってきて鳴いた。
“このままでいいの?”と言われた気分だ。
アンはいつだって、ドロシアを試すように神秘的なまなざしで見つめてくる。
(言わなきゃ。……言わなきゃ!)
アンに勇気をもらってドロシアは続ける。
そして、翌日。
朝から四頭立ての馬車が玄関前に用意されており、ドロシアは朝からオーガストに追い立てるように準備をさせられていた。
まだ一度も袖を通していないドレスも再びスーツケースの中に入れられ、馬車に積まれていく。
「さあ。準備はできたかい?」
「あの、私」
「お父上に手紙を書いた。これで君が責められることはないはずだから」
差し出された手紙を破ってしまいたいような気分になりながら、ドロシアは受け取った。
どうあってもオーガストはドロシアを帰すつもりでいるらしい。
「荷物はすべてのせましたよ」
チェスターの言葉に、オーガストはドロシアの手を取って口づけをした。
「君に会えて嬉しかったよ、ドロシア。どうか幸せになってほしい」
「……」
ドロシアは返事ができなかった。
幸せになってほしいというのなら、このままここにいさせてくれればいいのに。
「みゃおん」
アンが足元に駆け寄ってきて鳴いた。
“このままでいいの?”と言われた気分だ。
アンはいつだって、ドロシアを試すように神秘的なまなざしで見つめてくる。
(言わなきゃ。……言わなきゃ!)
アンに勇気をもらってドロシアは続ける。