Innocent -イノセント-
「おい、大丈夫か?」



大丈夫って何?
大丈夫ってどういうこと?


こんな衝撃発言訊かされて、大丈夫でいられる方法があるなら教えて欲しい。

大丈夫なわけないでしょ?

それだけ酷いこと響ちゃんは言ってるんだって、本当に分からないの?

どうして、零れたイチゴミルクなんか拭いていられるの?

どうして、心配するフリしてグラスの破片かき集めてるの?



「怪我はないみてぇだな」



怪我なんてしてないし、そんなものどうでもいい。

そんなものより、この胸の痛みを何とかして欲しい。

軋(きし)む胸の痛みが止まらない。



「ほら、入れ直したから飲めよ」



グラスを割ったことを責めずに、優しく笑ってあたしを見たって、キュンとなるはずの胸はギシギシと痛むだけ。

こんなの響ちゃんじゃない。

あたしの知ってる響ちゃんじゃない。


否定したい気持ちがぐるぐる廻る思考の中、ノンちゃんの顔だけがリアルに浮かぶ。

目に映してるのは、目の前にいる優しい顔の響ちゃんなのに……、

あたしは、視界よりも脳内に浮かぶ、ノンちゃんの可愛らしい笑顔だけしか捉えられなかった。
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