Innocent -イノセント-




「……響ちゃんって、最低のホストだったでしょ?」



ずっと黙ったままのあたしが出した声は、自分でもびっくりするほど低かった。

でも驚いたのは自分だけで、オレンジを取り出し、何やら次の作業に取り掛かりだした響ちゃんは、



「否定はしねぇ」



驚くどころか、チラリとあたしを見ただけで、あっさり肯定する。


やっぱり不誠実だと思う。

これ以上、幻滅させないでって思ってるのに、ことごとく響ちゃんは裏切ってく。

あたしでさえ、こんなにもギシギシと胸が痛むのに、ノンちゃんがこんな響ちゃんの胸の内を知ったら……。

そう思うと胸が張り裂けそうだった。



「ノンちゃんに悪いと思わないの? 
良い女だって言うんなら、ノンちゃんだって最高の女なのに!! 
そんなノンちゃんに対して酷いとは思わないの?」



さっきとは打って変わって、高く突き上げるように荒げる声。

ノンちゃんを思うと、言わずにはいられない。

こんな響ちゃんを許しちゃいけないって、今まで響ちゃんを見てキュンとしていた自分を棚に上げて、ノンちゃんを守ってあげなきゃって思いに駆られる。



だけど……、
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