Innocent -イノセント-
別のお店のオーナーママさんに連れられ、響ちゃんのお店に来たらしい一華さん。


恐らくホストには興味なかったろうけど、同業の付き合いで来たらしい一華さんに、響ちゃんも他のホストさん達も、一華さんに指名貰いたくて浮足立ってたらしい。

その界隈では、既にナンバーワンホステスとして有名だった一華さん。

その一華さんから指名をもらえれば、ステータスにもなるしナンバーにも影響を及ぼすかもしれない。

だから、意気込む気持ちはみんな同じで……。


だけどそれは、一華さんの前では空回りになったと言う。

圧倒的な美しさと、そこから滲み出るオーラ。

何を言うでもなく柔らかく笑う一華さんなのに、本人を前にし、巧みに言葉を操れるホスト君はいなかったらしい。

それは、響ちゃんにしても同じで……。



「気の利いたこと一つも言えやしない。なのに、ラッキーな事に俺は指名を貰えた。最初に隣に座ったのが俺って理由だけで」



そう言って、響ちゃんは苦笑いする。



「俺じゃなくても、他のヤツが最初に隣に座ってれば、そいつが指名貰ってただろうな」



懐かしさを目一杯滲ませ苦笑いしてる。


響ちゃんが良かったわけじゃない指名らしいのに……、

最初に隣に座った人なら誰でも良かったらしいのに……、

そんな失礼極まりない相手なのにも拘わらず、例え苦笑いでも口元を緩め続ける響ちゃんは、やっぱり未だに未練があるんだと思わせる。


失礼過ぎる女だと正体を知ったあたしは、白けた目を向けてるってのに、それには一切気付きもしないほどに、口元には笑みを携えている。



「運が良かったとしか言えねぇよな。けど、運も実力の内だ。いずれ、時間かけて枕まで持って行きゃいいなんて考えてた」



……うん?……枕!?

それって……一体? 
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