Innocent -イノセント-
緩めた口元は喋りまでを滑らかにし、あたしの分からない言葉を発した。


白けてた目を上に向け、夜の世界に詳しくないあたしは考える。

そんな考えあぐねるあたしに、やっと響ちゃんは気付いたらしい。

白けた目には気付かなかった癖に、『しまった』 って顔を前面に押し出した響ちゃんは、

どうやら言うつもりの無い事まで口走ったと気付いたらしい。

だから、嫌でも分かった。

賢いあたしには、良ーく分かった。

絶対それは如何(いかが)わしいことで、不潔な事で……。

あたしには聞かせられない事の内の一つなんだろうと悟ってしまう。


その証拠に、再び白けた視線を送ってやれば、響ちゃんは分かり易いまでにあたしから目を反らして、


「い、色んな営業方法があんだよ。兎に角な? その日を境に、繋がりを途切れさせねぇよう、一華の店にもちょくちょく顔を出したわけだ。

そうすれば、お礼返しで俺んとこにも来るしかねぇしな? 
そうやって行ったり来たりが1ヶ月続いたんだよ」



さっきとは比べものにならないくらいの早口で、話を先に進まそうと言う作戦に出た。

そんな見え透いた魂胆なんて丸分かりなのに、



『ふ~ん、それで?』



って声には出さなくとも、ゆったりとした頷きを見せ“枕” には追及しないでおいた。
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