Innocent -イノセント-
響ちゃんがこんなにも腹黒いとは思わなかった。

ノンちゃんには、全くもって相応しくない!!

あんなにも心が綺麗なノンちゃんが、腹黒響ちゃんに汚されてしまう!!

いっその事、洗いざらいノンちゃんに告げ口して、こんな男とは別れた方が良いって進言してやろうかと思ってしまう。


響ちゃんなんかには "枕" まで容認しちゃう一華さんみたいな人がお似合いなのもしれない。

どんなに響ちゃんが一華さんを庇ったって、所詮夜の女だ。

響ちゃんと同じ類の人間だ。

そうやって響ちゃんと一華さんを卑下するあたしは、しっかりと態度に出ていたらしい。

高笑いの代わりに、これ見よがしに 「ふふん」 と、鼻で笑っていたらしい。


「ん?」


そんなあたしを響ちゃんが探るように見る。


こうなったら、あたしだって我慢するつもりはない。

遠慮なんてするつもりはない。

同じカテゴリーにいる二人に、これ以上あたしが気を遣う必要なんて全くない。



「お似合いだよね。響ちゃんと一華さんって人」


「……」


「どれだけ綺麗なのかは知らないけど、やっぱりさ、一華さんって人だって同じじゃん」


「……」


「如何(いかが)わしい響ちゃんの営業にも理解してくれちゃう人じゃん。

それって、自分も同じことしてたからじゃないの? 
二人とも不潔すぎて、とってもお似合い!!」



……言ってやった。


ずっと沈黙を守ってたけど、思いっきり嫌味っぽく言ってやった。


だけど、そんなあたしを……、



「……七海」



またも脅すように、響ちゃんが低い声を出す。

だからと言って、もう怯んでなんかやらない。



「なに? あたしは絶対に謝んないからね」



二度も同じ手に乗って、大人しくなんてしてあげるもんか。

どんなに怖い声出したって、屈したりなんかしないんだから!!

文句があんなら言ってくれば!! くらいの勢いで、鋭く響ちゃんを見上げるあたしに観念したのか、



「……はぁ」



響ちゃんは大きく息を吐き出すと、あたしをしっかりと見据えた。
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