Innocent -イノセント-
「七海……? どうかした?」
そんなあたしに、直ぐにそう訊いて来たのはノンちゃんだ。
大袈裟ともとれるほど動揺を隠せないあたしに、ノンちゃんが不審がるのも無理はない。
あたしの背後に来たノンちゃんは、肩に手を置き心配そうに覗き込んでくる。
そんなノンちゃんを直視出来ないのは、当然、響ちゃんから訊いたばかりの話が頭から離れなかったせいで……。
ノンちゃんの顔を見てしまえば、余計に切なさが込み上げてきそうで、見たくても見れやしない。
だけど、ノンちゃんをひと目見た時に、返す言い訳は見つけていた。
簡単に言い訳が見つけられるほど、いつもとは違うノンちゃんがそこにはいたからだ。
「だ、だって……ノンちゃんいつもと違うんだもん。……凄く綺麗」
俯いたまま見つけた言い訳を小さな声に乗せる。
きっと、響ちゃんから一華さんの話を訊いてなかったとしても、今日のノンちゃんを見たら、あまりの綺麗さにあたしは直視出来なかったと思う。
完璧なメイクは、ドジで天然なノンちゃんの本来の姿を隠している。
それほどまでに、普段のナチュラル感とは違い、綺麗に着飾っているノンちゃんは眩しかった。