Innocent -イノセント-
あたしの父親の妹であるノンちゃんは、父親よりも10歳以上は歳が離れてると思うけど、それはあくまで予想でしかない。

父親よりも、あたしとの方が歳が近いんじゃないかって思うけど、実際のところは分からない。

父親にも固く口止めをしているらしいノンちゃんは、あたしに年齢を教えてはくれない。

前に本当の年齢を教えて? と訊いた時。



『女は歳を気にしちゃいけないのよ?』



そう言ってのけたノンちゃんに、訊くのは止めようと思った。

唇を尖らせて言うノンちゃん本人が、一番気にしているらしいと悟ったあたしは、もう訊くのは止めてあげようと思った。

年齢を教えてくれないノンちゃんは、あたしが "望叔母さん" って呼ぶのにも抵抗があるらしい。

だから、気付いた時には "ノンちゃん" と、あたしは呼んでいた。

きっと必死になって、ノンちゃんが幼いあたしに教え込んだに違いない。


そんなノンちゃんが響ちゃんと結婚したのは、今から2年前。

あたしにとっても凄く嬉しいことだった。

だけどそれは、結婚そのものがって意味じゃない。


結婚するまでは、駅が二つ離れた街に住んでいたノンちゃん。

それまでは、たまにしか会えなかったノンちゃんが、結婚と同時にあたしの住む街に引っ越して来た。

自宅でフラワーコーディネーターの仕事をしているノンちゃんに、好きな時に会える。

その距離にノンちゃんがいる事が、何よりも嬉しかった。




なのに今は────……。
< 4 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop