Innocent -イノセント-



いつだったか……。

七海と望と俺との三人で、外で夕飯を喰った帰り道。

一目で夜の世界に生きていると分かる女性とすれ違った時、あからさまに七海は顔を顰(しか)めた。


好きと嫌いの境界線を思いのままに引く七海は、良くも悪くも素直だ。

我儘ってわけじゃない。

寧ろ、考える能力には長(た)けていると思っている。

ただ経験の乏しさから、自分の中の僅かな知識を判断材料としているだけのこと。


悪い事じゃない。

若いだけに仕方のないことだ。

そんな七海にとっての憧れの女は望だ。

事実、『ノンちゃんの方が断然綺麗!!』 そう言って、望の腕に自分のも絡め、纏わりつきながら騒いでたのを思い出す。


七海の中の望は、それだけ理想となっていたし、愛する望に優しく接する俺もまた、憧れの大人の男だと評価は昇格されていただろう。

その俺が元ホストだったなんて、七海には受け入れがたいことだ。

それでも知って欲しかった。

夜の世界で生きてる奴等が、全て汚れているわけじゃない。

誰しもが何かを抱え、精一杯に生きているだけだと言うことを……。



そして、一華もまた、そんな中に生きていた。
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