Innocent -イノセント-
「起きたのか?」
俺の腕の中で、重みの取れない瞼が薄っすらと開く。
「なに考えてたの?」
問い掛けてくる声は、まだ少しだけ掠れていた。
「……もう直ぐ13回忌だな」
俺を見上げていた瞳は、暗闇の中の天井へと移り、
「……そうね」
と、小さく呟いた。
一華の母親がこの世を去って12年。
もう直ぐ13回忌を迎える。
母親が築き上げ、一華が守り抜いた店は、今は信用ある者に任せ現在も存在する。
その店も今年で30周年。
丁度、店の節目とぶつかる13回忌の法要は、今まで身内だけで行っていたものとは違い、お世話になった関係者も呼ぶと言う。
それは何より、亡くなった母親の供養にもなる。
関係者と共に母親の思い出話に華を咲かせ、そして、その意志を引き継いだ娘である一華には、身内がいる前でも大勢の者たちが語りかけるだろう。
「なぁ」
天井を彷徨ってた視線を俺へと呼び戻し、抱き寄せる腕に力を込める。
「もう一度抱いてもいいか?」
返事はなく、恥ずかしそうにほんのりと染まる頬。
その頬を撫で、俺はもう一度耳元で囁いた。
俺の腕の中で、重みの取れない瞼が薄っすらと開く。
「なに考えてたの?」
問い掛けてくる声は、まだ少しだけ掠れていた。
「……もう直ぐ13回忌だな」
俺を見上げていた瞳は、暗闇の中の天井へと移り、
「……そうね」
と、小さく呟いた。
一華の母親がこの世を去って12年。
もう直ぐ13回忌を迎える。
母親が築き上げ、一華が守り抜いた店は、今は信用ある者に任せ現在も存在する。
その店も今年で30周年。
丁度、店の節目とぶつかる13回忌の法要は、今まで身内だけで行っていたものとは違い、お世話になった関係者も呼ぶと言う。
それは何より、亡くなった母親の供養にもなる。
関係者と共に母親の思い出話に華を咲かせ、そして、その意志を引き継いだ娘である一華には、身内がいる前でも大勢の者たちが語りかけるだろう。
「なぁ」
天井を彷徨ってた視線を俺へと呼び戻し、抱き寄せる腕に力を込める。
「もう一度抱いてもいいか?」
返事はなく、恥ずかしそうにほんのりと染まる頬。
その頬を撫で、俺はもう一度耳元で囁いた。