Innocent -イノセント-
『七海、七海』
って、騒がしくあたしを呼ぶ涼太とは違い、低い声で、それでいて甘さと色気を含んでノンちゃんを呼ぶ響ちゃん。
ついでに、愛おしそうに目を細めて見つめたりする。
涼太みたいに、ふざけて乱暴に人の頭をぐちゃぐちゃにしながら笑うこともなく、
どんなにノンちゃんがドジったって、緩くカールのかかった長い髪を優しく撫でてあげる響ちゃん。
おまけに、その髪をひと掬(すく)いし、キスまで落とすオプションつき。
その腕や手の甲に浮かび上がる血管も、筋張った指先も……、
何もかもが10代の男の子のものとは違うって見せつける。
顔が良いだけでも罪なのに、色気も優しさも惜しげもなく披露されたら、気にするなってのが無理な話じゃないだろうか。
あたしを女子高生だって区別するなら尚更で、大人の魅力全開にしないで欲しい。
大人の魅力に不慣れな女子高生には、刺激が強すぎる。
だからこそ、響ちゃんはあたしに伯父さんって意識させるべきだし、その努力をすべきだと思う。
それを何もせずに、平然とグラスを磨く響ちゃん。
理不尽だと思いながらも、ズルイを響ちゃんにも押しつけて、責任転換したくなる。