その笑顔が見たい


紗江と別れ、店を出てからすぐに葉月の会社へ向かった。

今日はお昼の仕事が終わったら、派遣会社の方へ戻ると言っていた。
名刺をもらっていたから、会社の場所はわかる。
ここからなら地下鉄で十五分だ。

会社の近くに行ったら連絡して驚かそうか。
電車の中、窓に映る自分のニヤケ顔に失笑する。


「なんだ、こんなだらしない顔をして」


地下鉄の音に消されて聞こえないのをいいことに声に出して呟く。
葉月がいれば、俺はいつだって幸せで穏やかな気持ちになるんだ。


電車を降りる頃には顔を戻す。
歩きながらあの顔は、さすがにすれ違った人に引かれるだろう。


地下鉄の出口階段を地上へ登って行くとすぐに葉月の会社が入ってるビルが見えた。
そのビルのエントランスにはソファがいくつか置いてあった。
何社も入っているビルらしく、エントランスでの待ち合わせが多いのかもしれない。



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