その笑顔が見たい

幸か不幸か、翌日から仕事がバタバタし始めた。
関西支社でトラブルが発生し、急遽、出張になったからだ。
現地では朝から晩まで取引先に出向き、一日走り回っていた。
自然に葉月のことを考える時間は削られ、仕事に逃げられた。


救いなのは一日一回は葉月からメールが来る。
疲れてホテルの帰って来るとそのメールが励みになっていて、翌日も頑張ることができた。
ふと頭をよぎる葉月と社長の後ろ姿。
社長とはどんな関係なのかをはっきり聞けないのは自分が臆病だから。


葉月と再会したその日にキスをした。
先まで進もうとした俺の欲を葉月はそれとなくかわした。
それは社長という存在がいるからなのか、それともただ単に再会したばかりだからか。


結局、東京に帰ってこられたのは日曜日の夕方。
柳さんには月曜日は休んでいいと言われたが、報告や出張精算、不在だった間の業務が溜まるのはいただけないので、月曜日は出社した。
食堂でもいいから、葉月にも会いたかった。

いつものように出社すると柳さんは既に出社していた。


「おはようございます」


「ああ、おはよ。出張、ご苦労だったな」


「はい、今日の午前中、報告に時間を取ってもらっていいですか?」


「ああ、朝一でやっちゃうか」


「はい、宜しくお願いします」




< 104 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop