その笑顔が見たい
朝礼が終わると予定通り出張報告をするために柳さんの席に行く。
詳しい内容は報告書として提出するので、簡単に概要だけを口頭で話す。
いつものように柳さんの席に椅子を持ってきて話すのかと思ったが、少人数で使用する小さな打ち合わせ室に連れて行かれた。
「どうしたんですか?」
「報告は支社からも来ているから、後で文章にしてくれたらいい。お前から何かある?」
支社からの報告と重なるかもしれないが、自分が気がついたことを伝えると「わかった」とだけ短く返事をもらった。
「で、本題だ」
ここに連れてこられた時から別の問題があると薄々は気がついていた。
しかし仕事のことだとばかり思っていたから、柳さんから出た言葉に唖然とする。
「S医院の永井さんとは?」
いつものからかう口調ではない。真面目な顔だ。
「一週間前にもう会えないと告げました」
「…話が食い違ってるな」
「えっ?」
「S医院の事務長さんからの話では彼女は結婚するから辞表を出したらしいんだ」
「誰とですか?」
嫌な予感がする。