その笑顔が見たい

「お前とだよ」


嫌な予感、的中。


「誰がそんなことを」


「永井さん、本人らしい」


「そんなこと…。先週、ちゃんと会って彼女に今後もう会えないことを告げて謝罪しました」


そこまで俺の話を聞いて柳さんは「ほー」と言った。


「お前にしては上出来だな」


「はい?」


「ちゃんとできるじゃないか」


「まぁ」


しばらく柳さんは考えて「わかった」と言い、取引先といえども社員同士のプライベートだから、気にするなと言った。


「お前がだらしない対応していたら問題だったが、ちゃんと謝罪したならいいよ。しかし、あのお嬢さんはどういうつもりなんだろうか?自分で自分の首を締めてるんじゃないか?」


「俺からもう一度連絡を入れてみます」


「慎重にな」


柳さんは軽く二回俺の肩を叩いて打合せ室を出て行った。
何がどうなってるんだ。
あの時、紗江はちゃんと承諾してくれたんじゃないのか。
葉月とただ一緒にいたいだけなのに、なんで次々と障害が出てくるんだ。


今まで恋愛に真剣に向き合わなかったツケが回って来たのか…
それまで知らず識らず傷つけた女性たちに初めて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


< 107 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop