その笑顔が見たい

柳さんから紗江の虚言を知って、すぐにでも取り消してもらい気持ちでいっぱいだった。
仕事は定時に切り上げて紗江に連絡を入れる。
電話をすると紗江はすぐに電話に出た。


「あ、翔太さん」


「紗…永井さん?」


「やだ、どうしたんですか?仰々しい。もうすぐ私たち結婚するのに」


電話口で紗江がご機嫌に笑っている。
何がどうなってるんだ?


「そのことなんだけど…おかしくない?この間、もう会えないって話したよね?」


「そうでしたっけ?」


明らかにおかしい。


「わかった、会ってもう一度話そう」


「はい!うちにいらっしゃいますよね」


「いや、行かない。外で会おう。この前のカフェで待ってるよ」


「…わかりました」


背筋がゾッとした。
紗江に何が起こっているんだろうか。
会うのが怖い。けれど、このままにしておいては葉月を迎えに行けない。

待ち合わせのカフェは会社帰りの会社員や学生で賑わっていた。
紗江の姿はない。

いつもなら俺よりも早く来ているのに、今日は俺の方が気が急いて早く到着したようだった。
注文したコーヒーを一口飲んだ頃、紗江がやって来た。


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