その笑顔が見たい


白い大きな家。
庭には小さな草花が花壇に並んでいる。

ベンチで本を読む葉月の膝枕に頭を乗せて、ウトウトと揺れていた。
ふっくらとしたお腹に耳を当て、生まれくる命の鼓動を感じる。

両隣の庭から葉月の両親と、俺の両親がこちらに手を振っている。
楽しかったあの頃に戻ったような感覚が身体を駆け巡る。
ゆらゆらと身体が浮いているように気持ちがいい。


「翔ちゃん、翔ちゃん…」


葉月の声が聞こえてくる。
そろそろ起きなくっちゃ。


「翔ちゃん、翔ちゃん…」


その声はだんだんと鮮明に聞こえてきた。
ゆっくりと目を開けると白い天井が見えた。


「翔ちゃん!翔ちゃん!」

葉月の顔がぼんやりと見える。
暖かい葉月の手が自分の手に重なってる。


「翔太!」


葉月の声と聞き覚えのある耳馴染みのある声。


「葉月ちゃん、先生呼んできて」


「はい!」


葉月が離した手の温もりがなくなって、葉月の声がする方へ向うとするが体がいうことを聞かない。


「ッッツ!」


「翔太、まだ動くな」


「…親父?」


「翔太!もう、心配かけて」


「母さん」


「俺…。ああ…ナイフが腹に刺さったんだっけ?」


「もう!この子は!」

泣きながら母親が俺の肩を叩いた。


「イテ!」


「あ、ごめん」



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