その笑顔が見たい
俺、生きてるんだ。
痛みを感じるってことは生きてる証拠だ。
葉月が連れてきた先生がざっと意識検査をする。
「これで一安心ですね。大きな血管の損傷や内臓にナイフが達していなかったのが幸いでした。しばらくは安静にしていてくださいね」
先生が出ていくとパタンと病室に扉が閉まった。
「良かった…」
崩れ落ちるように椅子にしゃがみ込んだ葉月の顔は少しやつれていた。
どれほど眠っていたんだろうか?
「今、何時?」
「夕方の六時だよ」
葉月が腕時計を見て答えた。
「あんた丸一日眠ってたんだから」
ベッドを挟んで葉月の向かい側にいる母親がブツブツと言っていた。
「あ?そうなの?」
腹を刺される前は確かに寝不足もあって熟睡していたのかもしれない。
葉月はまだ涙目で俺をじっと見ている。
「葉月が無事で良かった」
「翔ちゃん、ごめんね」
「いや、俺のせいだ」
葉月と見つめ合う…はずなのに、母親が邪魔をする。
「そうよ、葉月ちゃんをあんな危険な目に遭わせて。何かあったらお母さん、あんたを恨むわよ」
「…」
母親をじっと見ると「何よ!」と言い返してきた。