その笑顔が見たい
階段を降りてすぐその場所は見つかった。
廊下に面して中が見えるように大きな窓がある。
軽く運動ができるような筋トレマシーンが壁に沿って並んでいるのが見えた。
中央にはフロアマットが置いてあり、バランスボールやダンベルを使ってリハビリしている。
その奥にはベッドが数台並んでいて、まだ運動が無理な患者にトレーナーが手を添えてアドバイスしている様子が見られた。他にも待合室や談話室と結構な大きさを占めていた。
「想像してたより大きいな」
体型からして柔道かラグビーかというような体の大きい男性や、右膝に十字のテーピングをした男性。
小柄だけれど筋肉質な女性など見るからにスポーツ選手が数名リハビリ中だった。
内視鏡関連製品を担当している俺が、リハビリステーションを見学して、直接仕事には関係がないことだと言われそうだが、これもこの病院の特徴として情報に入れておくことも仕事につながるかもしれない。と、柳さんからの背中を見て覚えた。多くの情報があるに越したことはないはずだから興味を持ったことには目を向けることにしている。
窓から見える範囲のリハビリステーションを一通り眺め終わり、戻ろうと元来た階段に向かおうと振り向くと足に怪我を追った男性が車椅子でそばにいたことに気がつく。
上半身はトレーニングシャツを着ている彼は俺が邪魔で車椅子が通れなかったらしい。
「あ、すみません」
慌てて車椅子が通れるようにその場をどく。
「すんません。通れるかなと思ったんっすけど、俺の運転技術じゃ、足、轢きそうだったから」
と屈託のない笑顔を向けた。
歳は高校生くらいだろうか?やはり筋肉質の体には似つかわしくない可愛い顔をしていた。
その高校生を見つけたトレーナーがリハビリステーションから顔を出し、俺の後ろからその少年に声をかけた。