その笑顔が見たい
午後七時。
新宿駅で待ち合わせた聡は濃い色のダンガリーシャツにカーキ色のチノパンにスニーカー。
シンプルなファッションなのに背が高く均整のとれた体が際立つ。
「おお、待った?」
スーツのままの俺を見つけて嬉しそうに駆け寄って来る。
はにかんだ笑顔は懐かしくてほっとする。
「いや、さっき来たとこ」
「おー、街で見ても会社員だな」
「当たり前だろ」
「会社でモテるだろ?その辺にいる疲れたサラリーマンとは雰囲気が全然違うからすぐ見つけられた」
「何言ってんだよ、変わらないな、聡は」
聡もそして葉月も俺のことを昔から贔屓目で接する。
特に葉月は体育祭で活躍すれば「翔ちゃん、カッコ良かったよ、男前ー!」、勉強でいい点を取れば「翔ちゃんは賢いね」といつも褒めてくれていた。
それが嬉しくて、それが聞きたくて、また頑張っていたなと遠い昔を思い出す。
「どこ行く?テキトーに居酒屋に入るか」
そう言いながら行きつけの店もないこの街を大人になった俺らは自然に並んで歩いた。
聡はいつも俺の左側にいた。
葉月がいるときはその真ん中に彼女がいた。