その笑顔が見たい
僕がお腹にいる時から仲が良かった僕の母親と葉月の母親は生まれてからもずっと三人を一緒にしていた。
葉月は一度に二人も弟ができたと大きな目をキラキラさせて生まれた時から聡同様、僕を可愛がっていたと母親たちはよく話をする。
それからどこに行くにも、何をするにも三人は一緒だった。
共働きで忙しいうちの両親に変わって、一人っ子だった僕はよく木本家に預けられていた。幼い頃、熱を出しやすい体質だった僕のそばに葉月と聡はいつもいてくれた。
両親がいなくても淋しいと感じた時が無いのは二人がいたからだ。
葉月はふたつしか違わないのに、いつもお姉さんぶる。
僕らが小学生になった春、三人で遅くまで外で遊んで、心配した葉月んちのお母さんに大目玉食らったときも僕と聡を自分の背中に隠しかばってくれた。本当は葉月は帰ろうとずっと言っていたのに、僕らがまだ遊びたいと駄々をこねていたのに。
学校の図書館で怖いもの見たさに怪談本を三人で読んだ放課後。泣き出した聡につられて僕もワーワー大声で泣いたのに、葉月は僕らを抱きしめて「大丈夫、大丈夫」と背中をたたいてくれていた。本当は自分も怖くて震えていたくせに、帰るときにずっと僕の手を離さずにいたくせに。
いつもそばにいてくれた葉月。
いつも「翔ちゃん、大好き」って抱きしめてくれていた葉月。
だからいつまでもずっと一緒に居られると思っていた。
しかし、彼女が突然消えてしまった。