その笑顔が見たい

平日の居酒屋はほどほどに人がいるが大にぎわいという感じではなかった。
半個室になっている座敷に通してもらい、ゆっくり話ができる感じではある。
ビールに焼き鳥、サラダ、枝豆と定番のつまみを注文すると「あ、唐揚げも」と聡が昔から大好物の唐揚げを注文する。少しも変わらない聡を見て時間が戻される。
運ばれて来たビールに口をつけ、つまみが一揃いするまでは近況報告をする。


「あそこで働いてどれくらい経つの?」

ビールを半分以上も一気に飲んだ聡に聞く。


「んー、四年。新卒で入ってずっとだよ。翔太は何やってんの?うちに来るってことは医療関係?」

枝豆と俺の顔を交互に見ながら聡が質問してきた。


「うん」


返事は短めに会社の説明を省きたくて名刺を差し出す。


「へえ、大きい会社に入ったんだな。すごいじゃん」


俺のことを自分ことのように嬉しそうに喜ぶのは昔から変わらない。
葉月もここにいたら、同じように喜んでくれるだろうか。


「ごめん、俺、名刺置いてきちゃった。仕事、楽しい?」

俺の名刺の裏、表と何度も見返して聡はいう。


「良いよ、連絡先わかったし。仕事はほどほどに楽しいよ。やりがいはあるし、自分の動きがそのまま実績になるし、いい上司にも恵まれたから。聡は?」


「うん、俺も。患者さんがどんどん元気になって行くと嬉しい、自分も元気をもらえるよ」


聡はスポーツ万能だった。
あのまま同じ高校にいたら、推薦で大学に行くんじゃないかと思うほど。


「聡らしいな」



「そう?」

まんざらでもないと顔つきでニコニコと笑う。
聡はこうして元気に今を過ごしている。
きっと葉月もなんだろう。
今日こうして会ったのは、あの日から止まっている俺らの時間を動かしたかったからだ。
いつまでも核心に触れずに会話する不自然さは俺らは似合わない。


「あれから、どうしてたの?」



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