その笑顔が見たい

「何年かぶりにあった葉月は、ずいぶん変わってた」

葉月、変わってたという一言に神経を尖らす。


「大人になってた」


なんでもない言葉が突き刺さる。
その一言に含まれた聡の複雑な思いと意味を悟ってしまったから。


「酸いも甘いも嚙み分けたような、自分が今までに見たことのないような大人びた顔してた」


「…どんなふうに?」

恐々と聞いてみるもののひどく悲しい気持ちになる。


「一緒に暮らした頃の無邪気さとか、天真爛漫な感じが消えて、実年齢よりもずっと大人びていたよ」


聡はそれを見てショックを受けたに違いない。
そして同じ兄弟なのにこんなにも違った人生を歩ませてしまった姉に罪悪感を持っただろう。
葉月の家族は誰も悪くない。
おじさんだって良かれと思って保証人になったはずだし、おばさんだって聡を育てるのに精一杯だった。
葉月だって、子供という立場に甘んじていればいいものを、あの責任感の強さでおじさんを助けたい一心だったんだろう。それがわかるとどうしようもなく葉月に会いたくなった。

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