その笑顔が見たい
「親父の借金を一緒に返済していたんだ。葉月もおふくろも。なのに俺だけのうのうと大学に行ってた。俺に誰も何も言わなかったんだぜ。借金は少しずつ返済しているから大丈夫って言うだけだった」
「葉月はそれを望んでいたんじゃないか、聡には大学に行って欲しい、好きな職に就いて欲しいって」
そういうと僕の顔をハッと見て静かに聡が笑った。
「葉月と同じこと言いやがった。翔太は昔から葉月の気持ちに気がついてたよな」
「ん?」
「いや…とにかくさ、俺が不甲斐ないからみんな俺に何も言わないって失礼だろ、バカにされてるみたいで。だから葉月に楯突いた時があったんだ。けど葉月は『聡は大学に行って欲しいって。そしてやりがいのある好きな職に就いて欲しい』って。いつもの調子で姉ぶってさ、強がってた」
「だろうね」
葉月らしいな。いつでも僕らを守ってくれていた。姉ぶって。
「なぁ、聡…」
「あ?」
聡は唐揚げを頬張りながら返事をする。
「今度、いつ葉月に会うんだ?会う時があるなら俺も一緒に会えないか?」