その笑顔が見たい
柳さんはニヤッと笑って「バレた?」と茶目っ気たっぷりに言う。このギャップに女性ファンは萌えると言う言葉を使うに違いない。
「ま、あの子を育てると思ってやってみろよ。今まで営業のノウハウは惜しみなく教えたつもりだし、これからもそれはできるだろう、それ以上に活躍するだろうと判断した。だからお前には次の課題な。人を育てると言う」
「はぁ…。だからってなんで彼女なんですか」
「あの子、癖が強いからな扱いづらいんだよ。ま、お前がどう彼女を指導できるか楽しみだ」
「柳さん、勘弁してくださいよ」
僕は頭を抱えて「はぁ」とため息をつく。
「まあまあ、お前の欠けてるところを補ってくれると思うよ」
「俺の?」
「お前が持ってる人を寄せ付けない変なバリアを超えてくるかもな、あの子なら」
「なんですか、バリアって」
意味不明な言葉を使って笑っている柳さんに詳しく聞こうとした瞬間にまさしくバリアを超えてやって来た。
「あー、野村さん!」
「翔ちん!」
食事を終えた3人が並んで来て、宮崎と桜木が同時に声をあげていた。
「ブハっ!噂をすれば。じゃ、俺はこれで」
柳さんはタバコをもみ消してスタスタとその場を去って行った。
柳さんだって宮崎のことが苦手って見え見えじゃないか。
見つかってしまったからには、避けられずオフィスまで一緒に戻ることに。
後輩を育てる勉強か。
キャッキャと騒ぎながらオフィスに戻る宮崎の後ろ姿を見ながら、ため息をついた。
「翔ちん、ため息つくと幸せが逃げるよ」
時々、桜木は女子か!というような言葉を使うけれど、あながち間違っていない。
「お前はいつも幸せそうで良いねぇー」
桜木に皮肉を言いながら考える。
今後、かなり意識を変えることになるな。